「ありたい自分」のために学ぶしあわせ
世界を広げる楽しさを知る
千葉県に住む71歳の女性がビデオ会議システムZoomの使い方を熱心に学ぶ様子を紹介するのは、日経新聞の「スマートシニア」の喜び デジタル苦にせず、健康長寿人生100年を考える(4)です。
その方は看護の分野で20年以上働き退職後に民生委員を務めたそうです。地域の人とのつながりで世界が広がるのを実感し、「健康でいるには常に学ばないと」とオンラインも苦にせずタブレットを軽快に扱って講習会に参加しているようです。
健康でいたい、人とのつながりで世界を広げたいというのが学ぶ動機になっているのでしょう。
リスキリングによる変化への適応
「学び直し」「リスキリング」という言葉が世界的に聞かれるようになっています。
VUCAの時代ともいわれて久しい昨今、そこには以下のような背景があります。
- 就労者人口が減少を背景に生産性の向上が求められている
- 新しい産業、職種への対応、参入が求められている
- 技術革新やAIの台頭により、従来の職種や仕事もスキルアップ等を求められている
社会は常に変化してきた
私が新入社員で配属された総務部での仕事は、電話応対、来客対応、備品管理、入退職者の保険や年金等の対応(もちろん手書き書類)などでした。その他に女性社員だけのお茶くみ当番、朝の掃除というのもありました。
今の時代の総務部の仕事として残っているのは多くはないように思いますし、そのやり方や割く時間などは相当違っているはずです。
「うちの会社は変わらないんだよなぁ」なんてよく呟かれることですが、10年単位くらいで見ると、あったものがなくなり、なかったものが表れていることに気づくことでしょう。
私たちが社会に出たころの定年が55歳だったということは以前にもこのブログで書いていますが、その当時だと社会へ出て働くのは30数年。10年単位で見たら2回くらいこういった変化に対応すればゴール(退職)に行き着けた計算になります。
「なんとなく」乗り越えられる変化の波ではなくなりつつある
ところが今や定年延長が推奨され、撤廃の向きさえ出てきています。現役70歳と聞かれることも増えていますが、先の例に比すれば社会で働く期間は50年近くになるわけです。
この数十年の間にパソコンが出てきたりフロッピーが使われなくなったり、AIやロボットなどさまざまな技術革新がありました。人間が環境の変化に適応するサイクルは短くなり、その変化の波も大きくなっているように思います。なんとなく波に乗って越えられるという楽観論では立ち行かないように感じるのですが、いかがでしょうか。
国家が注力するリスキリング〜シンガポールの場合
ちなみに同様の課題感を持つシンガポールでは2014年から「スキルズフューチャー運動」という全国民のリスキリング計画が運用されているようです。25歳以上の男女に技能習得のための学習費用を支援し、対象のコースはデジタル技術から経営管理まで2万4千を超えるとのこと。国民のデジタル技能の底上げ、国の競争力の向上につなげる意図だと書かれています。
シンガポール、全国民リスキリング 人口より生産性優先 人口と世界 下り坂にあらがう(4)
個々の変化への対応の一環として「学び直し」「リスキリング」が大切だとしたときに気になる言葉の違いを紐解きます。
「勉強」ではなく「学び」を
「勉強」とは「勉め強いる(つとめしいる)」とも読みます。
・努力をして困難に立ち向かうこと。熱心に物事を行なうこと。励むこと。
・気がすすまないことを、しかたなしにすること。
「学ぶ」とは「真似ぶ(まねぶ)」が「学ぶ(まなぶ)」に変化していったとの説もあります。
・教えを受けたり見習ったりして、知識や技芸を身につける。習得する。
・経験することによって知る。
これらの言葉の定義から明白になるのは勉強は受動的で強いられ感がありますが、学ぶには真似たり経験によって習得するという能動感があるということです。言うまでもなく集中力もその結果の吸収度も後者が勝ることでしょう。
ありたい自分を求めて「学ぶ」
冒頭の女性がイキイキと活動していたのは、ありたい自分の状態を得るためにそれらの学びが必要だからという能動でした。
今の会社、今の仕事、今の職種でずっと働き続けるにしてもしないにしても、「今、求められている」ことをキャッチアップすると同時に、「自分の在りたい状態のために必要なこと、自分の関心領域を追求する学び(探究)」が大事です。追求した学びで仕事を見つける、仕事をつくるくらいの気概が、個々の学びを深めるように思います。
冒頭の紹介記事にこんなくだりがあります。
「健康で長生きするには心の状態も重要だと分かってきた」(慶応義塾大学医学部百寿総合研究センター長の新井康通さん)
健康長寿の人は決められたことを守る「誠実性」や人との関わりを持てる「外向性」、新しいものに興味を持つ「開放性」が高いとのデータを得ている。
「病気をしないだけでなく、アクティブに地域と関わるのが大切」
探究し、アップデートし続けよう
人や書籍、経験を通して学ぶこと。
新しいこと、わからないことをわかろうと探究すること。
人との関わりを閉じずに開くこと。
全ては心の持ちようと少しの勇気を伴う行動。
人生の後半戦をよりよく生きるためにできることは、日々の生活のなかでの小さいステップの積み重ねのように思います。
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