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役職定年制度に直面するミドルシニアのリアル(前編)

役職定年制度とは何か

役職とは、役目やその職務のことを指し、特に管理職のことをいいます。そして役職定年とは、社員である立場はそのままに、役職のみ退くことです。

導入の背景については「1980年代から行われた55歳定年制から60歳定年制への移行に際して、主に組織の新陳代謝・活性化の維持、人件費の増加の抑制などのねらいで導入されたケースと、1990年代以降に職員構成の高齢化に伴うポスト不足の解消などのねらいから導入されたケースが多いとされている」と人事院による平成20年度のレポートに記されています。

データを見る〜役職定年制度の導入状況

独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構の調査レポート【役職定年制度の導入状況とその仕組み 8章】によると、回答データが前提にはなるものの役職定年制度は2019年時点の平均で28.1%、導入の検討を含むと37.9%という結果が見受けられます。

人事院の【民間企業の勤務条件制度等調査 平成29年度】においても、500人以上の企業においては、今後も継続する意思を95.7%とした30.7%の企業が役職定年制度を運用しています。

役職定年制度の導入に直面する「バブル入社組」

ここで、先に述べた1980年代からの55歳定年制から60歳定年制への移行に重なるのが、いわゆるバブル入社組です。バブル期のピークだった1990年7月の有効求人倍率は1.46倍。2008年に起こったリーマンショック直後の超氷河期の数値は0.4倍ですから、1986年~1991年頃のバブル景気による売り手市場時に就職活動を行ったこの世代が、三顧の礼で大量採用されたというのに納得がいきます。その後のバブル崩壊で採用が大幅に減ったことにより、社員構成においてバブル入社組はボリュームゾーンとなりました。

結果、企業内でのポストが限られている状況の中、定年制度での退職時期が延びたシニア~ミドルシニア世代が社内に相当残るために考えられたのが、役職定年制度を活用した組織の新陳代謝ではないかと推察します。

この記事を読まれている方は役職定年制度がある企業の方でしょうか?身近には例がなく、すこし実態がイメージしづらいという方もいらっしゃるかもしれません。

そこで今回は「役職定年制度」について考えるための参考として、私の身近にある事例を二つ共有します。

Aさんの場合:素材メーカーのB2B営業。55歳で部長を退任。

素材メーカーに勤めるAさんは、1964年生まれの男性。新卒で現在の会社に入社し、一貫してB2B営業を担当してきました。42歳の時に部長となり、55歳の時に役職定年で部長を退きました。

私がお話を伺ったのは、役職定年された直後。当時はこんなふうに仰っていました。

「もともと営業という仕事が好きなのに、管理職になって人の管理仕事がほとんどになってしまって、正直な話、仕事自体が面白くなくなってたんですよ。事業戦略よりも事業管理を重視する社風もあって、会議やそのための資料作りとか、本当に嫌でした。だから営業の現場に戻れるって本当に嬉しかったです」

一方で気になる「役職定年による手当分の給与減額」については、3年かけて手当なしの給与になっていくとのことで、ダメージはジワジワ。あらかじめわかっていたので、不満やショックはないと言いました。それよりも戸惑ったのは、意外にも自分の心との葛藤だとAさんは続けました。

「うちの会社は、役職定年した後も同じ部署で仕事を続けます。元部下が部長に昇格し、自分はメンバーになりました。もともと社内ではさん付けで呼び合っていたので、やりとりに変化は何もないです。ただ、役職のスペースが空いた名刺を手にしたときは、本当に一般社員になったんだ、ってしばらく見つめちゃいました笑」

「これまで自分が招集して運営していた会議は、現部長が進めます。ここまではいいんですよ。ただ、部長を始めとしたメンバーのフォローに回るのが自分の仕事だ、会議はオブザーバーでいようと自分で決めたものの、黙ってるのに慣れないんですよね。答えやアイデアは見えてるからバシッと言いたい。その件は、こういうことに配慮したほうがいいんじゃないかと伝えたい。でも言わない方がいいだろうという自分の判断もあって言えない。聞かれたら答えようと身構えているけど、現部長はこちらには振ってこない」

「ここまでも良しとして」とAさんは続けました。

「予算が振られない営業会議があんなに辛いとは思いもしませんでした。プレイングマネージャーとして、部長でも予算が張り付いていたのに、ないんですよ。みんなのフォローなんて知るか!って思いましたよ苦笑。まだまだ自分は予算という目標を持って、バリバリやりたいんだって改めて気づきましたね」

Bさんの場合:IT企業の広報。50歳で次長を退任。

ITで広報を務めているBさんは、1970年生まれの女性。転職は現在の会社への1度で、まもなく20年目になろうとしています。50歳の時に役職定年で次長を退きました。

私がお話を伺ったのは、体調を崩されて休職している時でしたが、来月から仕事復帰だと笑って話してくださいました。

「うちの会社は役職定年が50歳で、他に比べてかなり早いです。これは、その後のキャリアを早いうちから考えるようにっていうのもあるんですけど、管理職は40代まででというトップの考えが強いようです。役員は50代なのに、なんだかなぁって思いますけどね笑」

「50歳になる半年くらい前に、健康診断で病気が見つかって、手術することになったんです。自分が企画した大きなプロジェクトが3つ動いていて、手術のために現場を離れるなんて考えられず、正直、参りました。なんとか仕事をしながら治療できないかと情報を集めたりしたんですけど、そうこうしているうちに倒れまして…早い段階で手術をすることになったんです。プロジェクトメンバーからは、有事なんですからゆっくり休んでくださいなんて言われましたけど、彼らだけに任せるわけにはいかないし、自分もやり遂げたい思いでいっぱい。手術の時間以外は病院からでも仕事するから!と個室をとって手術に臨んだんです」

「手術は無事に終えたんですけど、ちょっと術後の調子が悪くて自宅療養が長引きました。そんな状況でしたから、上司が仕事しているどころじゃない!と私の担当業務をすべて引きとって休ませてくれました。いや、今だからこう言ってますけど、当時は仕事を剝ぎ取られて休まされたなんて思ってましたよ。私がいなきゃ、あの件は回らないはず、こういう段取りはあの人は苦手…とか、気になって気になって。自分でやりたい思いと、自分がいなきゃっていう気持ちでしたね」

「ところが、仕事をしたくてもできないわけです。心配しながらメーリングリストを覗いていると、自分の予想とは裏腹にうまく回ってるんですね。役員からも賛辞を得ているし、このときにあれ?って」

「次は不安が来ました。早く仕事に復帰したい焦りとともに、モヤモヤが押し寄せてきて。会社の状況がわからないこともあって、ドンドン気持ちがしんどくなりました。幸運なことに、この辺りの気持ちを聞いてくれる友人がいて、少しずつ気持ちも落ち着いて、これからの仕事との向き合い方を考えたんです。自分はまもなく役職定年。広報ではない部署へ異動になって、何するんだろう。もう50歳、いや、まだまだ50歳。生涯現役で働き続けたいから仕事を辞める気はない。ちかいうちに定年制度は、おそらく70歳になるだろう。今の会社に入社して20年、これから20年もここの会社で仕事する?」

役職定年を迎えたお二人の事例から何を感じるか

いかがでしたか。長く現場での経験を積み、責任ある仕事に向き合ってきたお二人が、50代で役職を退いた後の「生の声」から何を感じたでしょうか。

同じ経験をした方、これからまさに役職定年を迎える見通しの方、自社には導入されていない制度だけれど、もし自分だったら?と思った方。色々なお立場から会社と個人の関係性や個人が幸せに働くということについて思いを馳せるきっかけにしていただけたらと思います

次回、後編では私の考えをお伝えしていきます。

 

 

 

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