自分のキャリアを支えてきた本当の仕事力を理解し、未来へ目を向けよう
海に浮かぶ巨大な氷の塊である氷山を例えとした【氷山の一角】という言葉があります。
これは、私たちが目にしている氷山は「見えているうちのごく一部だけ」ということから、今捉えている事象は一部であり、それを引き起こす要因や背景は根深くたっぷりと存在しているのだ、というようなときに使われます。一般的には「このたび発覚した問題は、ほんの氷山の一角に過ぎない」というように好ましくない物事について使われることが多いですね。そして氷山は、この海面下の部分が安定しているからこそひっくり返ることなく、安定して海中で浮かんでいるといいます。
今日はこの氷山のイメージを借りて、ミドルシニアがこれからのキャリアを考える際に、自分の「力」にどのように向き合うと良いのか。そんな話をしたいと思います。
目に見える仕事力
仕事を推進し成果を出す力を「仕事力」としましょう。海面の上の部分の氷山は、目に見える仕事内容や役割を表します。
営業、人事、事業企画や販売の現場。業種や職種で必要とされる専門知識やスキルを発揮する仕事を表しどんな環境(海)にいるかということも、目に見えるものとして捉えられます。例えば
- 技術革新が目覚ましい環境で営業企画の仕事をしてきた。
- 100年続く食品メーカーで正社員10人、契約社員30人のうちの一人として経理の仕事をしてきた。
というように、転職や副業、独立などキャリアを再考するときには、自分はどんな業界(環境)でどんな仕事(職種)をしてきたか、あるいは具体的にどんなテーマに取り組んで、どんな意思決定や作業をしてきたかを振り返り、これらを再認識しますね。それらはこの氷山の海面上の話ということになります。
一方、この氷山を安定させている下の部分には言及できていません。これまで担ってきた役割や成果を表現はできてもそのために発揮された仕事力は言い表せてはいません。先のような説明や認識ではあなたの力の一角を表しているに過ぎないということを、ここではご理解ください。
目に見えない仕事力=その人のキャリアを支えてきた業務遂行力
次に、この氷山の海面下の部分についてです。氷山を安定させているのは、言い換えるなら役割を果たすために発揮している仕事力=業務遂行力です。昨今では、業種や職種が変わっても持ち運びができる力=ポータブルスキルという表現をされることも増えています。この海面下の容積を見てもわかるように発揮する仕事力の相当の部分を占めていると、私は考えています。
具体的には、
- 仮説を立てての情報収集力
- ゴールに向けて段取りを調整した計画立案力、
- 困難な状況を突破する着想や企画力、行動力
- 関係者の思いや考えを引き出す傾聴力
- チームで動く力など。
もちろん問題解決力やリーダーシップの他に、可愛がられ力やメンタルのレジリエンス力なども含みます。
私たちは、個々人が持つ業務遂行力を土台に仕事力を発揮しています。そして、それらは相当の割合であるということはこの図のイメージからお分かりいただけると思います。
例えば、「半導体の営業をしていた人が、転職してスポーツインストラクターになった」というと驚く方が多いです。前途を心配される声も少なくないでしょう。しかしながら、
- 業界、市場、商品を知る
- マーケティングをする
- わかりやすい資料を作成する、説明する
- 業務フローを整える、社内調整をする…
と規模や商品・サービスは違っても「すべきこと」に目を向けると、両者の間には共通点が多々あります。その方には過去の仕事で培われた、「サービスや商品で、どんなベネフィットを得られるかのポイントを整理する力」と「粘り強くお客様を顧客にしていく力」がありました。結果的に周囲の心配をよそに、現在のインストラクターの仕事を楽しんでいます。
これからのキャリアにとって重要なのは、目に見える仕事力よりも業務遂行力
「2030年の自分はどんな仕事をしているだろう」「2040年にも仕事をしていたい」……金銭面だけでなく、ライフワークとして仕事力の発揮の場を求めているミドルシニアは多いと思います。ここで提案するのは、氷山の海面上に目を向けてどこでどんな仕事をするか、ということを検討しつつも氷山の海面下の力をもう一度見直してほしいということです。
人生がこの先も長く続くだろうとはいえ、私たちは仕事をとおして一山、二山を超えてきています。そんな私たちが蓄積してきた業務遂行力には誇れることが多々あるはずです。(二度と発揮してはならないものもあると思いますが…笑)
海面下の業務遂行力は一朝一夕にはついてこないからこそアップデートできることを見極め、もうやらないことは手放しましょう。それから自分を活かせる場を探して激変する社会の動きをキャッチアップしていけばいいのです。この仕事、と決めてからそこに必要な業務遂行力を「今から」仕込むほうが相当大変です。
さいごに、業務遂行力よりもさらに大事なのはマインドセット
ここまで業務遂行力に着目しようと書いてきましたが、これで終わり、とするわけにはいきません。
ミドルシニアの仕事力を活かす場は、そこらに転がってはいません。求めてくれる人や企業も、残念ながら少ないです。まだまだ心身ともに若い人に期待する世の中です。だからこそ、ミドルシニアにとって業務遂行力以上に大切なのは、以下のようなマインドセットではないかと思います。
1. 未来はこれまでの延長線上にはない。本当に、ない。
だから、「昔は…」というネタは通用しないし邪魔なだけ。さらにこれまでと違うのが標準設定だと腹に据える
2. 参考になる人生のテンプレは少ない。または、ない。
だから、自分で試行錯誤するという気概が必要
3. 社会と数十年関わってきたから見える俯瞰力を磨く。
だから、社会の激動の中でも大事なものが見える
4. アシスト力で貢献する。
だから、専門外であっても未経験でも業務遂行力で仕事を進めていく
5. 周囲の評価は遠慮がちになりやすく、耳に入りづらくなる。
だから、周囲の評価は参考程度に聞きながら、自分の機嫌は自分で取る
そして、本当に最後に。やれることよりもやりたいことを。
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