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役職定年制度に直面するミドルシニアのリアル(後編)

前回は「役職定年制度に直面するミドルシニアのリアル(前編)」として、役職定年を迎えたお二人の事例をご紹介しました。今回は、この事例もとに50代で役職を退くことについてご一緒に考えていきます。

役職定年。二つの事例から何を感じたか

素材メーカーのB2B営業。55歳で部長を退任したAさん

役職定年によって、仕事をし慣れた環境の中で、自分だけ立ち位置と役割が変わりました。

  1. 牽引役からメンバーへ、そしてフォロワーへ
  2. 予算目標のない曖昧な役割へ

前回にも触れていますが、ご本人がマネジメントよりも実務に意欲が向いているため、1.においては変化への違和感はあっても慣れていくでしょう。このとき、注意したいのが周囲との付き合い方です。

周囲は元部長に対して、「役職を退いた人=終わった人、気の毒な人」という認識を持たないでほしいものです。役職は称号ではありません。役割が変わっただけです。どう付き合っていいかわからず、コミュニケーションが空々しくなったという話も聞きます。人として尊重しながら、メンバーとして遠慮なく向き合ってほしいものです。同様に、本人もメンバーという立場を踏まえ、上司面はもちろんのこと、先輩風を吹かせるようなことのないよう注意したいです。

一方で、2.の予算目標のない役割には、少々首をかしげます。営業部のメンバーとして、後進の予算目標をサポートするのか、個人の予算目標達成が成果なのか、業務上のゴールを決める必要があるように思います。本人の適正、スキルと意欲、報酬とのバランスで、面談をとおして決めていくのがいいのではないでしょうか。個人にせよ組織という単位にせよ、予算達成がモチベーションだった人にとって、達成感の臨めない業務に専心するのは難しいことです。

ここで注目したいのが、モチベーションです。以下のデータにもあるように、役職定年された方々が追い求めて手に入れた「役職」の定年と同時に起きる「年収」の減少は、相当のモチベーション低下を招いています。

公益財団法人 ダイヤ高齢社会研究財団 「50 代・60 代の働き方に関する調査(2018 年 7 月)」

さらに、事例のように「役割」の変更に戸惑う姿も見受けられます。その会社にいる意味を見出し、いかにモチベーションを保持できるかは、本人の会社人生での充足度とともに、組織にとっても看過できないことです。

IT企業の広報。50歳で次長を退任したBさん

役職定年を前に病気で仕事を離れ、結果的に会社との関係性を見つめることになりました。

  1. 自分がいなくても仕事は回っていた
  2. 新しい環境でどうするか

自分が企画をした仕事は、自分がいてこそ回っていると考えていたものの、入院中に何のやりとりをしなくても仕事は進んでいたことを知ったBさん。個人に依存しないで仕事をする、抜けたらフォローするということを組織の常としている周囲は、有事の対策で日頃以上の力を発揮して仕事をすすめたことでしょう。組織としての経験知総量があがった機会にもなったはずです。

次にBさんがすべきは仕事を取り戻すことではなく、新しい企画を立てて仕事をつくる、または先のAさんのようにメンバーのフォローに回るなどでしょうか。

大切なのは、自分の意思を自分で確認することです。Bさんは役職定年後、異動になりました。この変化を受け入れるにしても「合わせていく」のではなく、「これでいいのか」「これがいいのか」と自問自答してみていただきたいです。

我慢の先には、「昇格」も「昇給」もないことがほとんどです。何を目的に、どんな励みで仕事をしていくのか、いつか訪れるこれらへの自問に先回りして答えを出しておきましょう。「会社はなんて言ってる?」「人事はどう考えてる?」と様子を伺って自分の意思を考える癖は、そろそろ止めましょう。会社は会社の論理で動いており、個人の幸せや充足感を第一に考えてくれるわけではありません。さらにいえば、会社の中でどう動くかを離れて、社会でどう動くかと考えてみるのもいいと思います。(退職や転職をすすめているわけではありません)

人生後半を豊かにする「第二のモラトリアム」

定年前に社内での上着(役職)を脱ぐのが役職定年、入社時に装着し、今や身体の一部になっている感のボディスーツを脱ぐことが定年です。

入社以来、辞令によって配属され、上司の指示や先輩からの申し送りによって仕事があり、それらをこなして成果を上げてきた人にとって、自分自身の意思に沿ってキャリアを考えることは社会人になって初めてという方があるかもしれません。馴染んだ環境を離れることには寂しさ、不安、恐れがある方もあるでしょう。会社の中で指示命令によって動きなれた身体には、少し移行期が必要な気がしてなりません。

役職がある方の役職定年前後、役職がない方にとっては定年マイナス5歳から10歳の頃から定年までの期間に、来るべき定年をどう迎えるか、定年後はどうするかを考える機会にすることをお勧めします。人生90年、現役70歳時代を生きていくミドルシニアの私たちに必要なのは、この機会です。私はこれを、【ミドルシニアのモラトリアム】と名付けました。

モラトリアムとは、本来「支払い猶予期間」ことですが、E.H.エリクソンの提案した精神分析学では、「社会的責任を一時的に免除あるいは猶予」とした青年期という意味で使われ、「アイデンティティ確立のためにゆっくり試行錯誤できる猶予期間」とも言われます。青年同様に、ミドルシニアにも「自分は何者であるか」というアイデンティティの確立と同時に、自分と向き合って決断する勇気と行動力を装備する準備と時間が必要だと考えています。

親、学校、会社、もしかしたら家族や世間からも感じている可能性のある呪縛から離れて、【自分の人生を生きる=自分の人生のハンドルを取り戻す】のがこの時期の重要なミッションです。

役職定年とは、こんなふうに向き合ってみてはどうでしょうか。よかったら皆さんのご意見もお聞かせください。

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