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体験レポート:ユニバーサルデザインから考える「支えあう」社会

出会ったのは8年前。

当時はまだ珍しかった「朝会」でプレゼンターとして語った彼女の話に、私は大きな衝撃を受けました。彼女の名はNPO法人ココロのバリアフリー計画の代表理事である池田君江さん。

2007年に起きた渋谷温泉施設爆発事故に巻き込まれて車椅子生活になったこと。
これまでのように外出もままならず引きこもりがちになったなかでリハビリのトレーナーとの出会いをきっかけに外出できるようになったこと。
そこで気づいた行動を阻む物心のバリアがまたしても外出を抑制したものの、ある飲食店との出会いをきっかけに「建物の構造上にバリアがあっても周囲の少しのココロがあれば、バリアどころかバリアフリーをも超える素敵なお店や場所になる」ことに気付き、協力飲食店や物販店などのバリアに関する情報を集約し発信する活動を開始したこと。

障がいのある方・高齢の方・ベビーカーを利用する方に限らず、誰もが心地よく安心して外出できる社会をめざしていくというビジョン。

障がいのある方の状況、配慮について考えることなど皆無だったことを恥じながらも「ちょっとしたことで役立てること、双方が温かな気持ちになれる」という彼女のメッセージに感銘を受けたことを契機に、彼女を始めとした当事者の方にお話を聞いたり、セミナーに出かけたり、障がい者雇用を積極的に推進する企業訪問をしたりなど、自分ができることを学ぶ日々が続いて今に至っています。

ユニバーサルルームのあるホテルへの宿泊体験

そんな彼女と先日、ユニバーサルルームのあるホテルに宿泊しました。

「コネクティングルーム」という2部屋が続いたその客室は、1室がユニバーサルルームになっています。彼女が使用する室内のドアは全て引き戸、電動ベッドが設置されており、ベッドは上半身、下半身別々に身体を起こしたり全体を昇降することが可能でカーテンの開閉もリモコン操作でできました。またクローゼット内のハンガーラック位置は備品を使って低位置になっており、大きなバスルームはお風呂、洗面、トイレがひとつになっていました。

館内の毛足の長いカーペットが車椅子ユーザーに酷なことは認識しているため、そんなとときは後ろから「押すね」と声をかけます。ホテル内の庭は大半にスロープが設置されており、梅雨の晴れ間の散策を楽しむことができました。

こう書くと多少の不都合はあるもののバリアフリー化は進んでいるように思えるかもしれません。しかし正直なところ、共に過ごす中で少なからずショックを受けていました。今回、久しぶりに当事者である彼女とサービスを受ける側に立った時、レベルの高い業界とも言えるホテルでさえなおバリアフリーを支えるサービスが未熟なことを痛感せざるを得なかったからです。

以下に、よかったことと残念だったことの抜粋を列挙します。

よかった点

  1. エントランスは毛足の長いカーペットの脇が大理石のため、車椅子移動が楽にできた
  2. ユニバーサルルームの室内から見る景色はとてもよく、脇に追いやられている感なく迎え入れられているように感じた
  3. 和室移動のためにエスカレーター、スロープの対応があり車椅子のまま入室できた
  4. 夕食のブッフェではスタッフの方が声掛けをしてとりわけを手伝ってくれたりトレーを運んでくれた
  5. 精算時にフロントスタッフの方がカウンターを回って車椅子脇で対応してくれた

残念だった点

  1. 一人旅の想定がなく、帯同者を介助者前提で見てるように感じた
  2. お風呂は入ることができず、シャワーも使用できなかった
  3. 一般客室と違って、クロゼット前にもバスルーム前にも全身を写す鏡がなかった
  4. 和室に車椅子で入室できたものの、テーブルが低く脚を入れるのがやっとだった
  5. 化粧室は各階に車いす対応だと案内いただいたが、そうではなかった

彼女が無茶なことを要求はしていると感じたことは一度もありません。

ハード(施設や備品など)の構造的な限界もコスト的なハードルも認識しているからこそ「建物の構造上にバリアがあっても周囲の少しのココロがあれば、バリアどころかバリアフリーをも超える素敵なお店や場所になる」と信じて活動しています。

思い込みで「思いやり」をしていないか

今回、何がいちばん残念だったかというと「障がい者の人はこういう対応がいいだろう」という前提(思い込み)が感じられたこと。

例えば今回、入室するとベッドには立ち上がる際の補助具が設置されていました。しかし彼女は車椅子からベッドに移る際に補助具を必要としません。逆にない方が移動するのにスムーズです。あらかじめ必要の有無を聞いていただけていたらスタッフの方の手間も、外す側の作業も不要になるわけです。

「こういう希望がある」「こんな対応ができる」というやりとりがあれば少なからず解消します。思いやりをもってしていただけたことも事実に向き合わない対応は齟齬を生む、改めてそんなことを痛感した一件でした。

大切なのは事前の情報開示とコミュケーション

彼女が常に言うのは事前の情報開示です。

どこにどんな、どれくらいの段差があるか。段差を回避するための方法(回り道やエレベーターなど)の有無などが情報公開されていれば対処の準備ができます。その場に行かないと使えるか使えないかわからない、使えると思ったら使えなかったというのが一番困ることだからです。

さらに障がいに限らず現状が利用しづらい人の状況はそれぞれのため、個別に聞きながら対応することの重要性です。本人はどういうサービスがあれば快適かを知っています。それを事前に確認し、できることとできないことをあらかじめ伝えておくことで互いの期待と実際に差は縮み、満足度を安定させることができます。

人は思考のルーティン化により思い込みが起きやすいものです。個別対応が必要とわかっていても思い込みが邪魔をするということを認識しながら「事実」をもとに対応することが大切です。

心地よく暮らせる物心の環境を、それぞれで支え合える社会に

ユニバーサルデザイン(英: universal design、UD)とは、文化・言語・国籍や年齢・性別・能力などの違いにかかわらず、出来るだけ多くの人が利用できることを目指した建築(設備)・製品・情報などの設計(デザイン)のことであり、またそれを実現するためのプロセス(過程)と言われています。出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

ユニバーサルデザインの7原則の一番目に表されるのは「どんな人でも公平に使えること」。

誰もがいまのとおりの体力、生活様式を送れるわけではありません。幾つになってもどんな状況になっても、心地よく暮らせる物心の環境をそれぞれで支え合える社会でありたいと思っています。

池田君江さんによるセミナー(無料)が非公開で開催されます。日時は6月28日(火)の14時~15時

ご希望の方には当日のURLをお知らせしますのでお問い合わせください。

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