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【書籍紹介】THE HEART OF BUSINESS

「Our purpose is to enrich lives through technology.(テクノロジーを通して人々の生活を豊かにする)」

これは、アメリカのミネソタ州ミネアポリスに本社を置く世界最大の家電量販店、ベスト・バイ社のパーパスです。

ここでいうパーパスとは「何のためにこの会社があるのか」という企業の根本的な存在意義、究極的な目的や全体の指針を指します。事業の原点、根拠であり企業が困難な状況に遭遇したり岐路に立ったときには判断基準の軸となるものです。

アメリカの雑誌フォーチュンの「フォーチュン100」にも選ばれているアメリカで一番大きな電気屋チェーン店であるベスト・バイ社。散々などん底の状態にCEOに就任して経営再建を果たし、2019年にCEOを、2020年に取締役会長を退いて、自らが育てた後進に道を譲ったというユベール・ジョリー氏が共著で出版した【THE HEART OF BUSINESS   Leadership Principles for the Next Era of Capitalism(ユベール・ジョリー+キャロライン・ランバート著)】を読みました。

「人を大切にすること」の本気の実践

本書は経営再建を果たした著者の成功物語を時系列に書いたハウツー本ではありません。著者の心の変化、自身の変容と経営再建をリンクさせた実践の記録と言った方が近いでしょう。

テーマは、表紙のサブタイトルにある「人とパーパス」を本気で大切にする新時代のリーダーシップ。

・人やパーパスの本質
・その効果
・そういった組織をつくるための視点と具体策
・これらを推進するリーダー
など、解説まで含めると369ページと大作ですが、とても読みやすくわかりやすく書かれています。

著者と交流のあるソニー元社長の平井一夫氏が帯に寄せているコメントが、本当に読後の感想に等しいので引用します。

何をいまさら、と思うかもしれない。だが私たちは、人を大切にすることの本気の実践と並外れた成果をまだ知らない。

価値観やこれまでを否定しても

著者は40代に成功の追求は幻想ではないかと考え、立ち止まり、思考し、学ぶうちに「仕事とは人を中心に据えながらパーパスを追求することによって導かれるものであるべきだ」という信念に行き着きました。そしてビジネスや資本主義の在り方を根本から見直し、とことん自分と会社とメンバーに向き合いながら自身の経験、慣れ親しんだ考え方を変化させていきます。

こう書くと素直な柔軟性のある人のようですが、マッキンゼーで経験を積み5つの会社をCEOとして再建してきた著者にはそれなりの確固とした考えと実績があったはずです。しかし彼は信念をアップデートし、これまでの経営戦略や手法をある意味ドンドン否定していきました。価値観やこれまでを否定することでもあったと思いますが、著者は信じるその道を開拓していくのです。

強い文体で引っ張っていく物語ではありませんが読者へは章ごとに「あなたへの質問」で次々と問いを投げかけます。自分自身のパーパス、そしてどう在りたいかを考えずにはいられなくなる流れです。

どこの組織にもある「無意味(ではないか)とわかりながらも行っていること」を否定するくだりなどは、読む人の共感を大きく呼ぶに違いありません。舞台はアメリカですが、ひとりの人間よりも人間関係を重視しがちな日本においては、身近な事例に事欠ないように思います。

一方で著者のリーダーシップによって変容していく組織のストーリーに「そんな簡単じゃないよ」と上司や役員の顔を思い浮かべ、ため息が出続ける人もいるだろうと想像します。

ノーブル・パーパスこそ会社の戦略の要である

「人はリソース(資源)ではなくソース(源泉)だ」「ビジネスの目的は『株主価値の最大化』ではない。『ノーブル・パーパス(大いなる存在意義=世の中に充てたいと願うポジティブな影響)』を会社の戦略の要にする」と主張し、著者は体現していきます。

そこには「人」⇒「ビジネス」⇒「財務」という経営慣行を超えた取り組みの難しさが感じられました。冒頭の平井さんの言葉のとおり「いまさら」ではありますが、個人に置き換えて考えてみて自分がそう扱われたらどんな気持ちになるか…言わずもがなですね。

ここで実績をしっかり出しているのが敏腕の経営者である著者であり、理想と思いたくなるほどの世界が実践の記録としてここにあることに希望があります。

一人ひとりが自身のソース(源泉)を活用し、より幸せと感じられる社会へ

ハフポスト共同創業者であるアリアナ・ハフィントン氏が寄せた書評も紹介します。

企業経営だけでなく、ビジネススクールで教えられるビジネスや資本主義のあり方に対する人の心や考え方も変えるだろう。これは必読の本であり、私たちの時代を決定づける一冊だ

本書では1部で仕事の意味を問い、第2部でパーパスフルな組織の在り方を求めます。第3部でヒューマンマジックを解き放つ(人が本来持っている魔法のような力のこと。信じられないほどのパフォーマンスを引き出す)ために組織に必要な具体策を丁寧に表し、第4部ではパーパスフル・リーダーになることについて迫り、自身の退任のタイミングと重ねたリーダー論について描いています。

本書が多くのビジネスリーダーに読まれ、ビジネスや資本主義のアップデートが湧き起こるとともに、一人ひとりが自身のソース(源泉)を活用し、より幸せと感じられる社会に近づいていく期待を本書に感じました。

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